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奈良地方裁判所 昭和32年(わ)120号 判決 1967年6月29日

本店

奈良県吉野郡吉野町橋屋一四六番地

吉野丸坪木材株式会社

(代表者清算人 坪岡道夫)

右の会社に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官丸谷日出男出席のうえ、審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告会社を罰金一〇万円に処する。

訴訟費用中昭和四二年三月一〇日証人信定聡男に支給した分は被告会社の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は、奈良県吉野郡吉野町橋屋一四六番地に本店並びに工場を有し、木材業、製材工業、樽及び樽材料の製造販売その他の業務を営み、資本金一〇〇万円、決算期を毎年三月末日とする法人税法上の同族会社であるが、被告会社の業務を独裁的に運営していた代表取締役坪岡甚作(昭和三四年一二月二九日死亡)は、同会社の所得を隠匿して法人税の減額を図るべく、実際には同会社の営業の外には、これと別個の坪岡甚作個人の営業はなかつたのに、同人その他の個人または虚無人名義の別口勘定を用いる方法によつて、これを実行して、昭和二八年四月一日から翌二九年三月末日までの事業年度の被告会社の所得は一、四二六万五、八四〇円、その法人税額は五九九万一、六三〇円であつたのに拘らず、昭和二九年五月三一日所轄吉野税務署長に対し、同事業年度の被告会社の所得は四八万八、四〇〇円、その法人税額は二〇万五、一二〇円である旨の虚偽の申告書を提出し、よつて、かかる不正の行為により同事業年度の法人税五七八万六、五一〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一、大蔵事務官作成の吉野丸坪木材株式会社提出の法人税確定申告書写し

一、証人大蔵事務官信定聡男の第四回第八回各公判調書中の供述記載(修正貸借対照表の写し)

一、山崎実、田中茂美、久保次三郎の検察官に対する各供述調書

一、坪岡甚作の検察官に対する昭和三二・五・九付、昭和三二・五・一〇付、昭和三二・五・一一付、昭和三二・五・一五付二通の各供述調書

一、清算人坪岡道夫の第八回公判調書中の供述記載

(法令の適用)

昭和四〇年三月三一日法律第三四号附則第一九条、同法律による改正前の法人税法第四八条第一項第五一条。被告人会社は昭和三五年四月二〇日解散しており、前示脱税額については、五三二万余円を納税し、被告会社の資産は殆んど全くないこと、その他を考慮して被告会社を罰金一〇万円に処する。刑事訴訟法第一八一条第一項本文。

(裁判長裁判官 塩田宇三郎 裁判官 坂口公男 裁判官 加藤光康)

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